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「しかし妃殿下、試験は開始したようです」
「それにしては、なんの合図もありませんが……」
老戦士の言葉通り、サクラブライは合図も無しに動き始めていた。
駆動音を残しつつ、練兵場の中をはじめは小走りに、徐々に速度を上げ、縦横に走り回り、障害物である盛り土や塹壕を軽々と飛び越していく。また、時折停止、転瞬、向きを変えて急加速、自身の身長ほどの高さのある断崖から軽く助走を付けて跳躍、二十メートル以上の高さに飛び上がり、五十メートルを越える距離を跳んだ。
その後もサクラブライは華麗な運動性を発揮、しかも、それでいて全力を出し切っている様子はなく、寧ろ余力を残している感じを見せていた。
「とても良い動きをしておるようです……やはり、機械である鉄甲騎と違い、動きが滑らかですね……」
その出身故か、西方言葉を交えたミトナ王妃の感想に、老戦士が驚きつつも解説を加える。
「確かに……駆動の美しさならば、凱甲騎にも勝りましょう……ただ……」
「ただ?……」
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