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「動きに覇気が感じられません。本当にあの動きで、凱甲騎に勝利したとは、小生には信じられません……」
老戦士の指摘は正しかった。
再び機関室に乗り込み、気分が高揚し、得意忘形となるナランに対し、鎧をその身に纏わせ、実際に動き回るモミジの心は、完全に灰心喪気しており、それが挙動に表われていた。
今のモミジは、何の感情も込めずに、指定された動きを淡々とこなしているだけであった。
一方のナランは、モミジとは逆に高揚した気持ちを抑えられなかった。
まるで水を得た魚のように……寧ろ空に帰った鳥のように、活気横溢とした気分で機関を調整し、モミジに指示を出していた。
「前席、次は両刃の槍であの的を壊すんだ!」
無言のままモミジは、目の前に出された可動盾に格納された武器の内、直剣二振りと、短めの棍を一本取りだし、それらを組み立てた双刃槍を構える。
「行きます!」
モミジの掛け声とともに、サクラブライが、目標となる、鋳潰す予定の、鉄甲騎の外装を取り付けた丸太が立ち並ぶ丘へと向けて走り寄る。
「うりゃあぁ―――!」
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