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「めちゃくちゃですな。とても武技と呼べるものでは……あの案山子が反撃できるものであれば、あの者はとっくに返り討ちにされておりますぞ」
老騎士の感想は、イバンも同様に感じていた。
「私が見た時とは、別人のようだ……凱甲騎と戦ったサクラブライは、未熟ながらも攻防一体の構えを見せていた……
何より一つ一つの動きに機関士との一体感が見えていたのだが……」
「ナランの奴……まるで、なっちゃいねぇ!!」
おどおどするシディカを余所に、ドルージが怒鳴る。
遠くから見守っていたダンジュウもまた、同様であるが、こちらはより深く、その動きの乱れを感じていた。
そも、ダンジュウの武技は、元々イズルの国独特の流派を継承したものではあるが、それをより鍛え、昇華させたのは、モミジの母であるサクラの教えがあったからなのだ。
すなわち、この武辺者はモミジにとって、兄弟子でもある。
「切っ先が震えている……心が荒れているな……」
指摘通り、モミジはこれまでの精神的不満を槍に込めているだけでなく、すべての的をさっさと倒し、この試験を早く終わらせたいと思っていたのだ。
しかし、有頂天のナランはモミジの気持ちに気付くことはなかった。
「これで……」
サクラブライ機関室――
ナランの心中が、機関の調整中に思わず口に出る。
「これで……この力で……[仇]を討てる!」
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