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「仇……?」
モミジにその意味を問う機会は、与えられなかった。
「いいぞ……今度は、〈過剰充填〉だ!」
「……え?」
モミジが問い返すより先に、ナランは過剰充填器を作動させる。
「充填……開放!!」
ナランの叫びと同時に、焔玉機関がより大きな駆動音を立て、同時に、関節部から余剰の蒸気を吹き出す。
ここで戸惑ったのはモミジであった。
サクラブライ兜内側――
「え? え?……わわわ、わぁ―――!?」
面頬の中のモミジは、不意に体が浮かび上がったことに大きく狼狽える。
充填開放時に発生する浮上現象がモミジを不意に襲ったのだ。これは、落ち着いて制御すれば止めることるできるし、更にはこの現象を利用して風のように疾走し、また、天高く跳び上がることも可能であるのだが、慣れぬ上に冷静さを失った今のモミジでは、とても制御しきれるものではない。
「今度は、僕の番だ!」
慌てふためくモミジを余所に、ナランは受像機の脇にある操縦桿を握る。
「いくぞぉ!」
ナランの操作で、サクラブライの補助腕に装備された大盾が、まるで巨大な翼、または獣の手のように大きく広がり、周囲の目標を一気に薙ぎ払おうと振り回される。
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