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「まとめて吹き飛ばしてやる!!」
何かに取り付かれたかのように、ナランは操縦桿をめちゃくちゃに動かし、両方の可動盾を目標に向けて振り回そうとする。
これが、機関士が起こした場合の、〈共鳴〉による弊害のひとつであろうか。モミジの荒れた動きが魂魄回路を通じ、ナランの高揚する心に、破壊衝動として反映されてしまったらしい。
だが結局、大盾を振り回した事で発生した慣性により、浮遊能力を使いこなせないモミジの体まで振り回してしまう。
心の空回りを切っ掛けに、身体まで空回りを起こしたのだ。
「きゃあぁぁ―――!!」
「わぁぁぁ――――!!」
その場を盛大に回転し、地響きと土煙を立て、俯せにひっくり返るサクラブライの機関室では、ナランが正気に戻っていた。
「痛っ……前席、何やってるんだ……しっかりしてくれ!?」
思わず叫ぶナランだが……
「…………私は、」
――もう、耐えられません!!
「え?」
「私は、あなたの乗り物じゃありません!!……」
練兵場に響き渡るモミジの叫び――
それは、限界に達したモミジの苛立ちが形となった瞬間だった。
そして、心優しい巨人の少女が、悪者以外に対して初めて見せた、怒りの感情でもあった。
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