その男ゼットス

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 ――あいつが現れなきゃ、よかったんだ!!  あの巨人の小娘が出てこなければ、間違いなく勝利していた。  いろいろ計画に手違いはあったものの、あの時点で勝負を決めていたら、ホドの街で足止めしていたイバンが例え戻ってきたとしても、どうにもできなかったはずなのだ……  何度自問自答(じもんじとう)を続けても、結論は同じであった。  もう何日も、こんな事を繰り返していた。  同じ事を、毎日、繰り返し続けていたのだ。 「そうだ……すべてはサクラブライとかいう……」 「サクラブライとかいう英雄が出てこなければ、君は勝てた……」  突然聞こえた男の声に驚き、振り返ったゼットス。  驚愕の表情を浮かべ、反射的に身構える首領の(そば)には、いつの間にか、全身を黒い長衣で包み、同様に黒い頭巾で顔を隠す人物が(たたず)んでいた。  まるで、[影]のような男だった。 「あんたさんは……」  最初からそこにいたのか、それとも、闇の中から現れ出でたのか、あるいは、その姿通り人影が立ち上がったものなのか……  その人物を、ゼットスは知っていた。 「俺さんを……笑いに来たのか……」  思わず呟く。     
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