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ゼットスが文句を言うのも無理はない。彼のウーゴ砦壊滅作戦は、すべてこの、[影]のような男からもたらされたものと言っても過言ではないからである。
当の[影]は、その言葉を意に介さぬようではあるが。
「そう言われても、我々の業務に保守役務は含まれていないのだがね……
第一、ヘオズズ引き渡しの際、製品説明の折に『鉄甲騎との戦闘を避け、高い機動力で逃げ回ることを推奨』したにも拘わらず、それを守らなかったのは君たちではないか?……」
短剣を突き付けられつつも怯まず突っかかるゼットスであるが、逆に反論され、言葉に詰まる。
「……とは言え、出会い頭に組み付かれ、その上、立ち塞がったのは正体不明の巨人に加えてイズルのサムライなどと言う予想外の敵……これは不可抗力としても、致し方なしか……」
そう言って[影]は、右手を上げ、軽く払うように振る。
「私は、無益な殺生は好まない」
その直後、黒覆面たちはその場から、まるで最初から存在していなかったように、消えた。直後、脂汗に塗れたゼットスはその場にへたり込む。
[影]の辛口な戦闘評価は続く。
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