その男ゼットス

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 やがて、茶を啜る音と菓子を咀嚼(そしゃく)する、わずかな音のみが聞こえるだけの緊迫した茶会は、[影]が沈黙を破ることで、お開きとなる。 「さて、君が落ち着いたところで、商談に入ろうではないか……」 「商談……だと?」  訝しがるゼットスを余所に、男は淡々と十露盤(そろばん)を弾く。 「代価は……君がドルトフ閣下の飛空船〈メリエンヌ号〉から分捕った〈飛翔装置〉四基と〈推進機〉八基に、魂魄回路……それと、発電用の大型焔玉機関に使用されていた、特大の焔玉……まだ、足りんな……」 「おい、何、勝手に話を進めてるんだよ……大体、それは全部、組織を立て直すために温存していた貴重品だぞ!」  ゼットスの抗議も、[影]には届かない。 「……後、鉄甲騎か脚甲騎かは知らんが、四騎ほど出しそびれた機体があったはずだ。それも支払いに充ててもらうとして……」 「手前ぇ!」     
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