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少年は今度こそ訪れる死に恐怖した。
そう思った刹那、少年の頭上を、再び巨大な何かが覆う。
それは、人の形をしていた。
だが、人ではない。
人であれば、[龍]と同じ大きさの筈がない。また、全身から蒸気を漏らし、喧しい絡繰りの音を立てるはずはない。
その人の形を模した[機械巨人]はその右手に、身体に比例する巨大な剣を構え、少年を、そして街を守るように、敢然と[龍]に挑み掛かる。
少年は、それが何であるかを知っていた。
その名は〈鉄甲騎〉
炎の石にて生み出された蒸気で動く、鋼鉄で造られた機械仕掛けの巨人。
それは、破壊された[ブリキの巨人]とは比べものにならない逸品。
そして、この世界で最も強く、高価な武具をその身に[纏う]のは、数多の戦を勝ち抜いた戦士。
[龍]の吐き出す光球にも怯まぬ、重厚堅固な鎧を纏う人造の巨人は、けたたましい駆動音と勇ましい雄叫びを上げ、何者をも砕く剣を振るい[龍]と戦う。
人々は、その姿に希望を持った。
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