第1章

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地下に掘り下げたマンション、地下の戸建てがほとんどで、地上に出ている部分は、完全防備の超高層マンションかオフィス・ビルだけである。  地上に道路は一切なく、建物のある場所以外の敷地は地下の天井となり、耐熱・防弾ガラスで覆われている。  通路は、全てがステンレスの合金で囲われた地下道か屋根の付いたドーム型アーケードである。 舗道はエスカレーター式で、室内同様、完全空調され一年中天候に左右される事無く快適な生活と移動が出来る。  また、電車は全て地下鉄になり、道路のない地上を走る自動車はない。  歩行用のアーケードに繋がった、ポーチのある玄関。そこを入り短い廊下を抜けると15畳程のリビングがあり、キッチン寄りにダイニング・テーブルが置いてある。  帰宅した家族はそこを通り、それぞれの部屋へ向かう。  家族が集まるのは食事の時位なのだが、日比谷家では通常でもここで時間を過ごす事が多い。これは非常に稀なケースである。  中学校から帰ったばかりのナココ。襟に青いリボンの付いた水色の制服は春用の長袖。空調のお陰で常に快適なのだが、季節感を保つために夏までは長袖と決められている。  笑顔に幼さの残る、どちらかと言うと母親似で、二年生の中でも美人な方だ。     
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