第1章

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 リビングにはテーブルで絵日記を描いている弟のマナビ。向かいには父親の拓司がゲームに興じ、母親の園美はママ友とメールのやりとりをしている。  リビングの周りで質問に答えたり、資料の説明をしていたこの家のR、ロボ吉がナココに今日の報告を受け、明日の予定を確認している。 「ロボ吉、今夜は宿題、自分でやるからイイよ」  やり取りが終わると、少しはにかんでナココが言った。 「ソオデスカ リョウカイ シマシタ。 ナココ デート デスカ?」  各家庭に配備されたRには、品番の他に住民票や氏名が与えられる。名前はその家族で決めるのだが、『ロボ』という文字が必須だ。彼は『日比谷ロボ吉』という名前で日比谷家に籍を置いている。 「もう、知ってるくせに……」  顔を赤らめて唇を噛む仕草が、子供のそれとは違って来ている。ロボ吉はナココを成熟期と捉え始めている。 「パパサン アスノ ヨテイデス」  腹部のモニターをナココの父親、拓司に見せながら、ロボ吉が内容の説明をする。  Rの家族への呼び方は、その家族が決めている。全員を名前で呼ぶ家庭もあるが、この家では子供達を名前で呼び、父親の拓司をパパサン』、母親の園美を『ママサン』と呼んでいる。 「ああ、分かったよ。でも、明日の朝でもいいんだろ。今、忙しくて……」     
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