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1 クラス委員長の結衣ちゃん
「昔々、中国に盧生という若者がいました。旅をしていた盧生は邯鄲という街に立ち寄り、そこで不思議な道士と知り合いました。あっ、道士というのは仙人みたいなものね」
6限目の漢文の授業。現代文よりも古文や漢文が得意だという望月先生が、はつらつとした声で「一炊の夢」という故事について解説している。
ふつう、お昼ご飯を食べたあとの5、6限目は、みんな眠たくて、うつらうつらと舟をこいでいる子が多いのだけれど、いつも元気いっぱいの望月先生は向かいの西校舎まで届きそうなぐらいの大声で授業をするものだから、居眠り常習犯の子たちもうるさくてちゃんと起きていた。
わたし? わたしはどの授業でもまじめに勉強してますってば。心配しなくても、妄想なんかしていないよ! だって、授業のあとで、
「先生! さっきの話、妄想していて聞いていなかったから、もう一度教えてください!」
なんて聞きに行く勇気ないもん。
5月の半ばまで授業を受けていなかったんだから、遅れを取りもどすためにも、がんばらなきゃ。成績が悪かったら、お父さんやお母さんを心配させちゃうし。
「盧生は、その不思議な道士から、どんな夢でも叶う枕をもらいました。盧生は、宿の主人に『あとで食べるから、栗の粥を作っておいてくれ』と頼むと、その枕で寝ました」
どんな夢でも叶う枕?
もしかして、オオクニヌシさまが聖徳太子さんから借りパクした夢殿(の模型)みたいな不思議アイテム?
仙人だったら、そういう不思議アイテムを持っている可能性は十分あるよね。
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