プロローグ

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 だがその危険性も十分察知していたつもりだ。だから予期せぬ状況で遭遇してしまったときには、すぐさまバイザーをはずしマシンの電源も切った。その時点で意識は現実に戻って来られた筈なのだ。なのに…  何故だ…?  何故…まだ見える…?  ここはもう…現実のはずだ…!  なのに何故…  向こうにしかいない筈の―――少女の姿が消えない? 「三番線、電車が参ります。白線の内側までお下がりください」  ひどく目眩がした。電車の警笛が耳元で鳴っているような気がして、頭にガンガン響く。少女がまた目の前で微笑む。俺は…何をしている?……ここは何処なんだ?  無意識の内に両脚はホームを離れ、ゆっくりと体は落下していく。鈍痛と共に伝わってくる冷たい床の感触。だがそこが何処なのかわからない。男の視界は最早少女に占領され、目前に迫る列車も目に入らずにいた。  もう一度。早く、あそこに行かなければ。  彼なら。彼ならきっと何とかしてくれる。  手に入れたパスコード。マリンコードとかいったか。あれの期限は、まだわずかに残されている。早く。  彼に会うことが出来れば、まだ望みはある……!  一際大きい警笛が鳴り響く。悲鳴や怒号がどこか遠くから聞こえてくる。次の瞬間、男の意識が途切れるまで、眼前の少女が笑顔を絶やすことは無かった。
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