1.ネットポリス

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 銃声が止んだ一瞬の隙をついてドラム缶の陰から躍り出ると、桐生が走り去った後をまるでなぞるかのように銃弾が壁を穴だらけにしていく。疾走しながらも桐生の放つ銃弾は物陰から銃を乱射する二人組を捕らえ、その肩口を正確に打ち抜いた。  残るは一人。  敵が潜んでいる廃材置き場の留め金を打ち抜き、積み上げられた鉄製の廃材を思い切り蹴り飛ばす。派手な音と共に並んでいた廃材の山は一斉に崩れ、それに紛れて男の悲鳴が聞こえてきた。  黒光りした山の上から様子を窺うと、奥に隠れていた男の下半身が完全に下敷きになっているのが見えた。廃材に乗っかられたまま苦悶の表情で唸っている相手の頭上に仁王立ちとなって、その脳天に銃口を突きつける。  終わりだ。  そう思った次の瞬間、桐生の耳元でけたたましくブザーが鳴った。  と同時に目の前に飛び交っていた銃弾も、辺りを覆っていた白煙も突然その動きを止める。 さっきまで派手な銃撃戦の舞台であった筈の廃工場の造形は歪み、目の前に倒れていた筈の悪漢達も霞のように消えていく。  ブザーが一層大きく鳴り響くと同時に、空中に大きく「LOG OUT」の文字が表示されるのが見えた。先程の廃工場は跡形もなく掻き消え、真っ暗な闇だけが辺りを包み込む。 明かりが点き、周囲に無機質な白い壁が見えると同時に、今度は耳元に聞き覚えのある金切り声が聞こえてきた。 「先輩!桐生先輩!課長が呼んでますって!」     
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