『夢想探偵』

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「君が僕と蒼月に対して、どういう風に思っているのか想像するのは難くないが、だからこそ言うのだが、もう一度考え直した方がいい。君達のいう『普通』とは果たして『普通』なのか?蒼月の部屋にいた四人を分けるならば、僕と蒼月、浅黄君と関戸刑事というセットになるだろう。このときの人数比は2対2だ。同じ比率においてどちらが『普通』でどちらが『異常』か君に判断が出来るのかい。たとえ同じ比率でなかったとしても、例えば君が精神病院に行けば、その世界における『普通』は彼ら患者であり、君が『異常』なんだ。分かるかい、『普通』なんてその程度のものでしかなく、決して普遍なものではないんだ。そんな『普通』にしがみつく君は僕から見れば『異常』だ。君が僕を『異常』だと思うのと同じように僕も君を『異常』だと思っている。そう考えるとどうだろう。人は皆『異常』なものだと思わないかい?この世に『普通』なんてものは存在しない。ある のは『異常』だけだ。『異常』な人間が『異常』な人間を見て『異常』だと叫ぶ。そして『異常』な人間程自分は『普通』なんだと宣うんだ。ハハ、正に地獄だね。救いようのない地獄絵図だ。ハハ、どうやら夢野久作先生が言っていたことは正しいようだね。この世界に住む人間は皆『異常』な狂人なんだよ」 紅露は嗤った。そして、まだ見ぬ何者かに向けて、挑むように、そして嘲笑うかのようにこう言ったのだった。 「これを読んでいる『君』もね」 ーーーーーー了ーーーーーー
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