研修ときどき雨模様

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 バスに4時間ほど揺られたことで、僕の焦りは鳴りを潜めた。  その代わり、僕と、そして同じく遅れてきた彼女(秋丸静香というらしい)との関係を根掘り葉掘り聞かれる、というアクシデントがあった。  もちろん僕にやましいことはなかったし、正直に、たまたま同じ車両に乗っていただけだと伝えておいた。  近くに座っていたクラスメイト達は、僕が詰まることなく話す姿を見て驚いていた。どうやら、僕はクラスで、人見知りで、話すだけで緊張でどもってしまう根暗生徒というレッテルを張られていたらしい。特に興味がなかったので、そのあたりの話はスルーしておいたけど。  今度は人の話を聞かない自己中人間、などというレッテルを張られるのではないか、という心配もあったけれど、まあ、そのあたりのことは正直どうでもよかった。  それよりも、隣の席に座っていた女子生徒のきらきらした目が眩しくて、そして非常に怖かった、とだけ言っておこう。まるで獲物を狙う肉食獣のような目つきをしていた。そんなに恋愛話に不自由しているのだろうか。  バスでの移動中は、簡単なレクリエーションで時間が過ぎていった。  まだ全体で自己紹介の場面がなかったため、それぞれが自己紹介を行い、その後、「いつどこ」というゲームを行った。  自己紹介で話す内容の一つとして決められた、某お菓子のキノコ派か、タケノコ派 か、というものが非常に謎だった。そんな話をして、何になるというのだろうか。まさかそれでクラスの派閥でも決まるのでは……なんてことも考えた。  いろいろと考え、結局、下手にどちらか一方が好きなふりをしてもすぐにばれてしまうだろうと考え、特にどちらが好みということはありません、と答えておいた。  あとから考えてみると、そもそも、ふりがばれるほど親しく話す友人がいないということに気が付いた。  どうもこう学校は進学校ということもあり、勉強中心で何かと話が回りがちだった。そして、僕の入った部活がかなり変人奇人の集まる部として有名だったらしく、僕に進んで近づいてくる生徒もいなかった。  まあ、自分に進んで近づいてくるクラスメイトがいるなんて考えるほど、僕は自意識過剰な思考を持つ人間ではない。まあ、人付き合いって面倒だなぐらいは考える、変人と呼べる人間ではあるのかもしれないけれど。
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