研修ときどき雨模様

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 まあ、そんな情報はどうでもいいのだ。問題は、その話が非常につまらなかった、ということ。  いや、人によっては面白いと感じる内容だったのだろう。現に僕の左隣りに座っていた生徒は、目を輝かせながら話を聞いていた。  僕は確かに高校で生命化学部、なんていう部活に入ってはいるけれど、別に生物分野は好きじゃない。あくまで僕が興味を持っている分野は化学であり、生物なんて路傍の石程度の認識なのだ。  そういえば昨日、部長の川北先輩が、この研修がいかにつまらないかをつらつらと語っていた。確か、事前に渡された発表のレジメに書かれていることがそのまますべて発表されるだけらしい。  実際、僕が今年もらった資料と、今聞いている発表の間には、追加事項も何もない。唯一あるとすれば、それは映像ぐらいのものだ。  というわけで、僕は早々に見切りをつけて、意識を闇に落としたのだった。  気が付けば話は終わっており、そこかしこで手を上にあげて背を伸ばす生徒の姿が見受けられた。無理もないと思う。何せ僕たちが今座っているシートは、よくプラネタリウムで座るような、背もたれの動く、柔らかいクッション式のものだったのだ。  僕が眠ってしまったのもそのせいだし、どうしてパイプ椅子程度にしなかったのか、という疑問もある。まあ、きっとたいした理由はないのだろうけど。  ともかく、いい時間、というかお昼の時間はとっくに過ぎ去っていた。  見れば何人かの生徒はおなかに片手を当てている。そう、僕たちは今から昼ご飯なのだ。ただし、モンキーパークのほうへ徒歩で移動してから。  さっさと食べさせろというはやる気持ちを押さえつけて、僕らは再び列を作って歩き始める。幸い、モンキーパークまでは5分とかからなかった。  各自解散で、自由に昼食となり、僕は人のいない方へと足を進めた。  いい感じのベンチを見つけ、そこに腰掛ける。  近くを木に囲まれていて、これならクラスメイトに一人飯を見られて馬鹿にされるようなこともないだろう。  すると、同じような思考からだろうか。同じ十和田高校の生徒らしき人物が一人、こちらの方へやってくるのが見えた。  そして、それが僕の知っている人物であったことに驚いた。  彼は永田栄一、僕と同じ生命化学部の部員だった。
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