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6月も終わろうかというある日のこと。
ガシャン、というガラスが割れる音が部室に響き渡った。
音の発生源は生物室の扉から見て一番遠く、右奥の場所。固まった藤野と、床に散らばるガラス片という、よく見かける光景だった。いや、ガラス器具を割ったというパターンはこれが初めてだが、こういう問題を発生させたのはもう何度目のことか。
アセトン事変から始まり、遅刻が数回、薬品を床にまき散らすことが2回、ものを燃やしてスプリンクラーを作動させたことが1回棚のガラスを割ったのが1回と、問題発生はたいてい藤野からだ。おっと、すでにガラス自体は割ったことがあったか。
スプリンクラーの件もまた、ひどく叱られていた。ただし、それ自体は僕が部活を休んだ日の出来事のため、残念ながら詳しいことは知らない。
とにかく、蒼白な顔で呆然と手元を見つめる藤野と、それを溜息交じりに眺める部員4名という、すでに完成しつつある光景がそこにあった。
いや、そんなに手元をじっと見つめても、手が滑って器具を割ったという事実は変わらないだろう、と心の中で思いつつ、僕は藤野の方へ向かう。これももはや習慣である。
残念なことに、僕以外の3名は動こうとせず、再びパソコンのキーボードをたたく音が再開され、そしてもはや、扉を開けて部室から出ていく足音さえ後ろから聞こえてきた。
そんな状況に溜息をつきながらも、僕はとりあえず藤野を励ましておく。
「仕方ないよ。誰にだって失敗はあるからね。とりあえず、危ないし破片を片付けるぞ」
うん、というか細い返事とともに、藤野がゆっくりと動き始める。その行動は普段に比べて非常にゆっくりしたものだ。
さすがにこうも失敗を重ねると、能天気な藤野でも落ち込むのかもしれない。まあ幸いなのは、今回の件については、決してわざと行った行為ではないということだろうか。
床を向きながら長箒と塵取りを持って歩いてきた藤野がガラス片を集めていく。その様子はいつになく暗い。
「大丈夫だって藤野。さすがに今回のはわざとじゃないわけだし、仕方ないよ」
そう励ましの声をかけたが、しかし、藤野はビクリと肩を震わせ、恐る恐るといった様子で僕の方を向いた。
「本当に大丈夫……?仕方ない?」
「ああ、大丈夫だって。さすがに手が滑ってガラス器具一個を割ったぐらいで熊岸も怒らないって」
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