青春の墓場へようこそ

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 無事に火が消え、残ったのは静寂だった。僕の心臓はバクバクと脈打ち、汗が額を流れ落ちる。 「いや~、すごかったねぇ~」  藤野ののんきな声が乾いた空間に木霊した。  グリン、と僕は不自然な程に首をひねり、藤野を見る。 「おまえ、さすがに危機感がなさ過ぎだろ。ほんと、冗談でも何でもなく、死ぬかと思ったんだよ」  そう、藤野の声に危機感がほとんど無かったのは、彼はほとんど炎を浴びていなかったからだ。視界の隅ではあったがそれは間違いない。  その代わりに僕が燃えかけた。……まあ、たいした被害はなかったのだけれど。 「…………はあ」  怒鳴りたい気持ちを必死になだめる。こんなことは無駄だ。何の意味もない。ただ雰囲気を悪くするだけ。  あと一年以上この部に通うことになるんだ。こんなことで禍根を残すなんて馬鹿らしい。と、そんなことを考えていたときだった。 「おい、何をしでかした」  部室に響いたいかつい声に、空気が凍った。  僕と藤野がそろって声がするほうへ顔を向けると……そこには目を見開き、眉間に深いしわを刻ませた顧問熊岸が立っていた。 「もう一度聞くぞ……藤野、何をしでかした?」  藤野、と犯人を断定してしまっているというのが恐ろしい。少なくとも先ほど準備室に入った時には先生はいなかったのだ。ということは、僕の大声か、もしくはその後のドタバタ音を聞いたからだろうが、そんなことではやらかした人間の確定などできやしない。藤野が今までの短い期間に、どれほどのことをしでかしてきたかがわかるというものだ。  いや、そんなことはどうでもいい。それよりも、このままだとまた僕にまで怒りの矛先が向けられかねない。  そんな考えをよそに、僕たちのほうへ近づいてきた熊岸が藤野の頭をどつく。 「さて、分かってるんだろうな……」  あまりの形相に、僕はなすすべなく立ち尽くした。
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