研修ときどき雨模様

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研修ときどき雨模様

 突然だが、この十和田高校は、SSH、SGHという、二つの国政(?)の認定校である。  要は、高校生のころから科学に多く触れ、科学的思考を養ってもらおうというのが前者。そして、国際発信を視野に入れた人物の育成というのが後者である。  そして、これらに対する補助金が国からおり、それによって高校側が様々なカリキュラムを組むのである。  さて、なぜいきなりこんな話をしたのかといえば、今日はそのSSHの学習の一環で、ちょっとした研修があるからなのだ。  そして、僕は今、電車の中にいる。時刻は8時20分。集合場所からバスが出発する時刻が8時30分。すでに点呼確認の8時15分は過ぎている。要は現実逃避、そして心を落ち着かせるために僕はこんなことを考えていたのだ。  そんな僕の気持ちをよそに、電車はなかなか進んでくれない。一駅進むために、先ほどから2分ほどの時間を要している。そんな状態が早10分。目的の駅までは早くても4分かかる計算になる。  そして問題は駅についてから、バスの停車場所までは徒歩8分、走って4分の距離だ。つまりギリギリ。  ただし、問題はその場所に僕が一度も行ったことがないということ。高校に入ってから初めての校外活動なのだ。バスが止まっているその場所に、もちろん僕は行ったことがない。  頼みの綱である地図の載った学校で配布されたプリントを握りしめ、僕は今か今かと、目的の駅への到着を待つ。  靴で電車の床を小刻みにたたきながら、僕は電車の停車を待つ。大丈夫、もう一分もすれば着く。そこから全力ダッシュで改札を出て、2番出口へ。それからまっすぐ道なりに進んで、県庁の角で右に曲がる……大丈夫だちゃんと覚えてる。あとは実行のみだ…… 「ねえ、君も十和田の人?」  突然の声に驚きつつも、僕はこっそり周りを見回す。自分の真後ろに同じ十和田高校の学生服を着た女子生徒、周りに僕以外に学生らしき人物は見当たらない……  そこまで考えて、僕は彼女にそうだけど、と返す。思えば、こんな遅刻ギリギリの タイミングの生徒がそんなに多いわけがない。現に2、3年生は今日は通常授業であり、もうとっくに遅刻の時間だ。朝のショートホームルームは20分からだから、現に3分ほど遅刻である。まあ、今日僕たち1年生遅刻がどう評価されるのかは知らないけれど。 「やっぱりかぁ」  彼女はのんびりとそう言った。
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