さよなら木村さん

4月の中旬、桜がもうすっかり葉桜になったころである。突然辞令が下りた。

木村さんが転勤になるとのこと。木村さんは我ら水戸支店の支店長である。支店長から部長へ栄転！というわけで、めでたい話ではある。しかし、それを聞いた私はまるで時が止まったようにパソコンの前ですっかり固まってしまったのである。

木村さんは今時珍しい昔堅気な人だ。ときには厳しく、ときには優しくと人情溢れる性質の持ち主で、私もこの3年間、木村さんから教わったことは山ほどある。
毎朝7時半きっかりに出社し、黙々と事務処理をしている。今まで支店長経験はなく技術系の仕事で現場監督などをやってきていたらしい。そんな人が支店長なんてと不安だったが、それはまったくの杞憂であった。木村さんは人より3つ程先を読み、何事も早めに対策をとっている様子。そして、私たち社員のこともいつも気にかけてくれた。様々な事案が同時多発しても、木村さんは慌てることなく的確な指示を与えてくれるので（かつ説明も端的明確）本当に我ら水戸支店は木村さんのおかげで秩序が保たれていたといっても過言ではないだろう。