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本当にここか」
『間違いない』
「間違いないってさ」
二丁目にある八階建ての商業ビルの一階に、喫茶チェーン店が入っている。サイが感じた気配があったのはこの店だが、そのビルの周りにはすでに多くのパトカーが止まっていた。侵入防止のテープが張られ、中へ入るのは難しい。
「遅かったって可能性が高いな」
「残念だけどそうだね。ちょっと聞いてくるよ」
そういうと杏奈は近くの刑事へと質問しに行く。一見中学生にも見える彼女は、最初は門前払いだったが、名前と名刺を渡すと、彼女に敬礼し中に入る許可を貰ってきた。精霊がらみの事件で決定したということだ。
「ご苦労様です、牛島警部」
「やあ、白鳥君に黒羽君。よく来てくれた。いや、なに君たちが関与するほどの事件ではないんだがね」
「というと、もうすでに犯人の目星はついているということですか」
「ああ。容疑者はすでに搬送した。今は証拠を探している最中でね」
「じゃあボクたちが現場を荒らすわけにはいきませんね。一度出直すとしましょう」
「いや、待て。多分だが、そいつは容疑を否認しているんだろ」
「ええ。しかし、彼以外で状況的に犯行を行える人はいなかった。終わったようなものです」
「八木真治がファクシパイダーだからといって彼以外が精霊の力を使えない状況だったって本当に言えるのか」
八木真治、その名を出した途端に牛島の顔色が変わる。
「どうして彼だとわかるのですか」
「簡単だ、容疑者として理由なく拘束できるファクシパイダーなんかあいつしかいない」
「まあ、ボク達を現場に入れた時点でこれは精霊がらみの事件なんだし、精霊関係者で捕まえられるのなんて彼だけだよね」
「その通りだ。奴の身体能力と精霊の力は確かに大したものだが五階から飛び降りるなんて度胸も力も奴にはない。あのバカにできるのはせいぜい万引きくらいだ」
「五階から?」
「五階にはレストランがある。この時間、人が殺されるような現場はあそこだけ。その下の販売店は十時前に開店して客が大勢入っているはずだしその上が経営しているのは大体が酒を販売する店。人がいないはずだから消去法でレストランのスタッフが殺されたんじゃないか?」
「じゃあ八木君は六階以上にある酒場でバイトした帰りに下の喫茶店で休憩していたところを上から飛び降りてカモフラージュに喫茶店に入店した容疑者として捕まったってところかな」
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