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 短く借り上げた黒髪は、水を浴びたように汗で濡れていた。額に張り付いた髪を掻き上げ、サイドパックの中にタオルを探す。 「使ってください」  目の前に冷たいタオルを差し出したのは、一番年若い隊員であるシンだった。  訝しむ目でシンを見たセロは、しかし思い直してタオルを受け取った。  この小隊は、セロを除く五名で構成されている。  シン以外の隊員はセロよりかなり年長者のため、若干二十五才の女性上官を、少なからず馬鹿にしたところがあった。  しかしまだ十六才のシンからすれば、セロは素直に敬意を払う相手なのだろう。  それにしても、なぜこのような少年がセロの部隊に配属されてきたのか。  この部隊は、いわば「害虫駆除部隊」だ。  生活圏から遠く離れたところに生息する害虫、『イービル』。  ムカデに似ているが、成虫で体長五~七メートルはあり、その巨?をくねらせながら動くもの全てを見境無く喰らう忌まわしい怪物だ。  ヤツらが地中から湧き出してから八〇年。  生息圏に近付かなければ被害は無いが、一定数以上増殖した場合、餌を求めて人間の生活圏まで侵入してくる。  被害が出る前に駆除するのが、セロの任務だった。     
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