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桜の木の背は伸びたかな?
線路沿いの柵のそばに、桜の木が生えていた。
風にそよそよ揺さぶられ、桜の花びらはひらひらと舞う。
「また背が伸びたかな?」
そう言いつつ僕は目の前の女の子の頭を撫でていた。
小さい頃から大好きな、その木と同じ名前の彼女―
「うん!」
と元気よく返事をしてくれた
風が強く吹く
桜の花びらがまるで吹雪のように―
一瞬目を瞑って桜吹雪が収まったら再び目を開ける
するとその女の子の傍にはそっくりな顔の女の人が、
白いスーツを身にまとって立っている。
微笑んで、
『帰ろうか』
声が重なり思わず微笑む―
小さい頃、この桜の木をよく見に来た
大学生の時、この桜の木の下でプロポーズをした
―彼女は泣きながら、だけど笑顔で応えてくれた
そして―
今日は娘の入学式
桜の木の下で出会ってから、18年…
あの頃から、
桜の木の背は伸びたかな?
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