おもう

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桜の木の下に死体が埋められているといったのは、有名な詩人。 でも、咲き誇る桜の微妙な薄紅色を見るために集まる人々の狂瀾ぶりから、本当に人間が埋まっていてもおかしくないと思う。 むしろ、人間が埋まっていてもらいたいとすら思う。 人々は、人々の骨の上を狂気と興奮で闊歩する。 ひたすらに散っていく桜の下を。 最近は、合戦や行き倒れがなくなって、昔みたいに桜の下に人が埋められることのなくなった。そのためか桜の花の色が薄くなったように思う。 まるで、骨みたいに白い、しろいしろいはなびら。 新鮮な死体を埋めて、桜を元気にしてみようかとも思う。 幸い、ただ生きているだけの肉体は腐るほど存在する。 満月のこの夜に、桜の木の下で。
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