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私は今でも忘れられない。あの時の匂い、あの時の感触、あの時の光景。思い出すたびに身体が震える。
「また、したい」
思わず口から溢れた。
私は台所に目をやる。閑散とした台所に一本の包丁がいる。包丁が私を呼んでいる気がして、私はそっと包丁を手に取った。目を閉じるとあの時の光景が蘇ってきた。渇いた心が潤っていく。
でも、でもやっぱり足りない。私にはもっと水が必要なのだ。私の心を潤す、赤い、水が。
「次は誰かなぁ」
私はタオルと着替えを用意し、鞄に詰め込んだ。もちろん、包丁も。
なんだかわくわくしてきて、思わず笑みが溢れた。
「じゃあ、行ってきます。…帰ってこれるか分かんないけど」
私は誰もいない家に語りかけ、家を出た。
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