22人が本棚に入れています
本棚に追加
白い煙が薄くなってたなびいて、私の所まで煙草の香りを運んでくる。
――雨の日の煙草は、湿り気に混じって哀しい煙の匂いがする。
その時私は、恋が終わった事を悟った。
それは煙草が悪いとか、別にそういう話じゃなくて、その佇まいから、煙から、香りから、ただなんとなくそう直感をしたのだ。
その後風の便りに聞いた話では、彼は美容師になって各地を転々としていると言う。
これまた美容師が悪いわけじゃなくて、
私が大好きで、理科系に頭が良くて、真面目で誠実で、笑顔が魅力的で、優しい彼は、
私の知っている彼は、もう私の世界には居なくなってしまったということを知って悲しかったんだと思う。
久しぶりに再開した大好きだった人は、
私の大好きじゃない人になっていた。
最初のコメントを投稿しよう!