織り成すあやかし【短編】

3/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
   私には妻と七歳になる息子がいる。──否、いた。と言えばいいのか。あいつは、ある日突然に私から全てを奪っていった。  私は裁縫屋を営んでいた。おかしな言い方かもしれないが、衣服だけでなく布や革などで小物を作っていたため、自らの店を仕立て屋ではなく裁縫屋としていた。  オーダーメイドだけでは大きな収入を得るほどにはなく、一定のサイズのシャツや女性向けの小物で生計を立てていた。  とりわけ、お守り代わりとして反物(たんもの)で作ったストラップは二枚貝の形に小さな鈴をつけて販売すると、女子高生の間で可愛いと評判になった。  どうやら「幸運のストラップ」として口コミで広まったらしく、それを求めて女性が大勢訪れるようになった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!