コンビニのオープニングスタッフ

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 僕はフリーターをしながら作家を目指しとった。  僕らの世代は第二次ベビーブーム、就職氷河期。  早めに進路を決めたのは良かったと思うけど、まだ芽は出てへん。  当時、家賃3万、風呂なし。  節約のため、ガスは契約せず。  近くに銭湯有り。  電気ポットと電子レンジで食事を乗り切る。  コンビニにオープニングスタッフに面接を受けて、夜勤で採用。  時給900円。  月給6万程度に働いて、執筆時間を捻出。  よくある話やけど、廃棄された弁当を貰って帰って、食費も節約しとった。 *  ある日、オッチャンの客が来た。  夜勤は、客が少ない分、仕事が多い。  二人体制やったんで、もう一人にレジを任せると、何やら気さくに話してる。 「さっきの人、黒ベンツでしたよ。コレモンやと思います」  顔に傷があるという仕草。  そして品出しの仕事に戻る。  なんや、物騒な人が来たんやなぁ。 *  そのオッチャンは、度々店に来て、僕を含めた夜勤の店員と仲良くなっていった。  ヤクザ=怖いという印象も無い。  黒ベンツを運転してると言っても、あまり裕福ではないのか、 「なんか、ええ廃棄品無いかー?」  と、自然にカウンターを越えて物色。  どのみち、誰も手を付けなければ捨てられてしまう物。  別にええかって、一緒に廃棄品を食べたりもした。 「なんや、そこの眉目秀麗なにーちゃん。今どきケータイ持ってへんのか?」 「家に固定電話とネット回線あるんで、特に必要性ないです」  これも節約の内。  当時は電話回線を使ってネットに繋ぐのが当たり前で光どころかブロードバンドさえ無い。  ISDNやったかな、ちょっとネット接続が速くなるプランはあったかな。 「そんなんやったらモテへんでぇ、もう二十歳超えとんやろ?」  店員は学生が多く、夜勤では最年長くらいやった。 「俺が、ちょっと口聞いたるから、ケータイくらい持てやぁ」  やはり必要性は感じへんけど、同僚のバイト君達からも休みの交代の連絡にケータイ持ってほしいとは言われてた。  家やない場所で電話かけられても困るけど‥‥仮にもヤクザに逆らうのも、ちょっと怖い。 「ほな、あっこの喫茶店で待ち合わせしよや。なんか飲み食いしとってもええで、俺が出したるから」
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