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「わたしもビックリしました……」
本当に凄い偶然だ。この仕事をしていたら会わないことはなかったかもしれない。だが、それでも数多い女の子が在籍している中では確率的に低い。
今回欠員が出なければ今日会うことはなかった。
それからというもの修二の仕事関係でパーティーがあるごとに智花が呼ばれることが多くなっていた。その度に修二は智花にプレゼントを渡していた。殆どがブランド物だ。
そんな中智花は予定通りに祐介と結婚した。結婚したらこの仕事は辞めるつもりでいた。しかし、古株の智花は部長に引き止められこの仕事を続けることになってしまった。
こうして智花は結婚してもパーティーコンパニオンを続けることになったのだ。
仕事上客前では独身のふりをして………
毎日のようにパーティーは続く。いつものように修二の会社のパーティーに呼ばれたある日のことだった。
修二から食事の誘いがきたのだ。勿論、修二は智花が結婚していることなど知らない。智花も仕事上言うつもりもなかったがプレゼントを貰っている。負いめは感じていた。
「智ちゃん。今度食事行こうよ」
「ごめんなさい。仕事以外では無理なんです」
今までも他の客から食事に誘われることはあったがプライベートで客と会うことは禁止されている。それに今は結婚もしている。修二だからといって行ける訳がない。
修二は残念そうな顔で悲しい笑いをしていた。既に修二は智花に好意を持っている。だからこそパーティーがあるごとに智花を呼びプレゼントまで渡しているのだ。軽い気持ちで食事に誘った訳ではない。そんな修二は諦めきれないでいた。
「どうしても駄目?」
どうしても駄目?……
智花の心が揺れはじめる。
智花には祐介がいる。しかし、もう一人の自分が断ることを拒絶しているように感じた。智花も修二に惹かれはじめているからだ。それでも今の智花には理性がはたらく余裕があった。
「やっぱり無理。ごめんね。誘ってくれてありがとう」
「わかった」
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