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祐介との喧嘩が毎日のように続く中心が落ち着くのは仕事をしている時だけだった。
忙しく仕事をしていると嫌なことも忘れられる。
しかし、現実は厳しい。祐介の借金の支払いが家計を圧迫していた。次第に智花は仕事の量を増やしはじめていた。喧嘩はしていても夫婦だから。昼間だけだった仕事も夜の遅い時間まで働くことになった。勿論、祐介も納得済みだ。
「ただいま」
祐介は既に帰ってきていた。
祐介の会社は殆ど残業がない。18時には家に帰ってきている。そのため食事の支度は祐介に任せてあった。台所をみると鍋やフライパンや食器が流しに積んであるのがみえた。
「お帰り。今日もお疲れ。メシ作っといたよ」
「祐介。ご飯作ってくれるのは嬉しいけど鍋とか片付けてよ。そのままになってるよ」
祐介は寝転びながら携帯をいじっている。
「ごめん。後でやるよ」
「後でやるってやったためしないじゃぁん。いつもわたしが片付けるんだよ。疲れてんのに」
流しに積んである食器をみるとうんざりしていた。いつも片付けは智花だ。立ちっぱなしでクタクタに帰ってきてまた家事をする気にはなれない。
「俺だって疲れてるよ。メシまで作って怒られるとは思わなかった」
祐介は携帯をいじる手を止めないまま怒った口調だ。
祐介の態度を見ているうちに溜め込んでいたものが溢れ出ていた。
「誰のせいで夜まで働いていると思ってんのよ?あんたの借金のためでしょ?そのくらいしてくれたっていいじゃぁない」
声は涙声になっていた。
体も心もいっぱいいっぱいになっていた。
人を思いやる気持ちなど残っていない。
幸せな結婚生活を夢みていた筈なのに現実はこうだ。
もう嫌だ。
こんな生活。
智花は泣きながら部屋を出るとあてもなく歩いていた。
修二に会いたい
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