刺身の時間

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まったく人間なんてちょろいな生き物にゃ。 いつも通り町中を歩いていると美味しそうな臭いがしてくる。 別につられてる訳じゃないにゃ。 これは僕のお仕事にゃ。 てくてく歩居ていくと魚屋が見えてくる。 僕は賢いから盗むような真似はしないにゃ。 魚屋の前に座り「にゃー」と一声。 「おや今日も来たのかい?」 何を言ってるのか分からないけど早くいつものくれにゃ。 いつものにゃ。 そう言うと魚屋の人が僕に魚をトレイに乗せ出してくれる。 にゃ!?にゃんと! 今日はさかなの刺身にゃ! 固いところがない、柔らかな切り身! 骨もないから刺さる心配もない! 臭みも無く、とろける旨味! 夢中で食べる僕を見ながら回りの皆が笑う 「可愛い」 「食べてる」 見世物じゃないにゃ! カシャカシャうるさいにゃ! でも美味しいにゃ~! たらふく食べて口の周りを舐めていると 子供から大人まで僕を撫でてくる。 ここからは僕の営業時間にゃ。 僕は賢いからちゃんと働くにゃ。 そうすると明日も魚を貰えるにゃ。 顎の下を撫でられ。顔が上へ上がる。 そこにゃそこがいいにゃ。 ごろごろ喉をならして、お腹を出してごろんと寝転がる。 「可愛い!」 「もふもふ」 四角い何かをこちらに向けてまたカシャカシャ音がなる。 今はいいにゃ、もっと見るにゃ こうがいいにゃ? このポーズがいいのかにゃ? ころころとポーズを変え人間がよってくるように仕向ける。 人が増えれば増えるほど明日のお魚は豪華になるにゃ。 僕は賢いからそれくらい知ってるにゃ。 5時のチャイムがなった。 あ、帰る時間にゃ。 人間ども、明日も相手をしてやるから 覚悟しとくにゃ! 僕はてくてくと魚屋の前を離れた。 人が追ってくるが、茂みに入ればもうついてはこれない。 人間はちょろいにゃ。
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