第五章3節

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 この世の中はゲームみたいなもんなのさ。さっき僕はいっただろ? 人の考えを自分の思考で捩じ伏せる。君がやっていたデマ流しはそうではないけど、普通そういうことができれば付加価値ができるんだ。これだね、これ」  藤代は人差指と親指で『まる』をつくった。  お金か……  「そもそも現実は競争社会だ。勝つか負けるか、損をするか得をするか、最終的にどれだけ多くの金を掴めるか。ある意味ゲームなんだ。わかるだろ?」  …僕は何もいい返せない。  「商売の基本は薄利多売だ。他よりもいいものを安く出す。そしてお客さんにガンガン買ってもらう。……ただ、それにも限界がある。つくるのにも仕入れるにも原材料が必要だし、それで結局赤字になんかなったりしたら元も子もない。  そこで出てくるのが、さっきいっていた人々の今までの常識を打ち砕くような新しいアイデアを考える奴だ。  それが皆が面白いっていうんなら、みんなが飛びついて買ってくれる。そうすればその報酬としてお金がたくさん入ってきてウハウハさ。  そして、周りに取り残された奴らはそのアイデアのおこぼれを預かろうとして、右往左往動き始める。  一人の人間が考えたことで皆が影響し動き始めたわけだ。  つまりこの世は自分の思い描く世界にどれだけ多くの人間を染められるかのゲームなんだ。     
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