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「それって、確かにそのときは君の頭の中で思いもしなかったことなのかもしれない。だけど、きっと心の中でいつかそうなってくれることを思い続けていたことじゃないのかな?」
………
あっ!と思う。しかし、これが駄目なら僕は反論の余地がないのだ。僕は強引に言葉を続ける。
「だけど、その人たちにだって人を受け入れる心はきっとある筈さ。その心を膨らませることができれば……」
「どうやって?」
藤代の視線が僕に冷たく刺さる。
「でも、僕にだって先生のような人間が現れたんだ。誰にでも現れるチャンスがあるんだ。あるんだよ!」
藤代が手を組み、前傾姿勢をとる。
「道生君、それって真咲の日記に書いてあったあの女の先生のことかい?」
僕は眉毛をピクつかせる。
「そうだ! それがどうしたっていうんだ!!」
「道生君、これは単なる質問じゃないか。そんなに大声でいわなくっていいよ」
僕は口元を一瞬だけ歪める。
「…お前が僕の下の名前を何度も気安く呼ぶからだ!」
藤代は顔をニヤッとさせる。
「いいわけはいけないなあ、その先生とやらには名前をいって貰えれば嬉しいんだろ?」
僕はその言葉を無視した。
そうしているとまた藤代が勝手に話し始めた。
「恋ねえ。結構、結構。できるうちにしておくがいいよ。
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