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まあ、君の心の扉を開いてくれた、そんな立派な女の方も明日にでも交通事故にあうなり暴漢に襲われるなりして死ぬ可能性だってあるんだと思うんだけどね」
僕の体に戦慄が走った。
…まさか先生を……
そんなわけはない。藤代は先生の顔は愚か名前も知らないはずだ。単なるたとえだ。しかもそんな可能性は米粒ほどでしかない。本当はこの場で話題として持ってこなくてもいいような確率なのだ。
気にするな。気にするな。
「なに目を瞑っているんだい?」
「関係ない。もう終わりか? 続きがあるんならさっさとしゃべろ!」
「そうかい? だったら」
もう終わりだと思って鎌をかけたら、奴はまた語り出した。
「君がいうように出会いのチャンスがいくつでもあるっていうのは確かさ。でもそれが実を結ぶ可能性なんてのはごく僅かだ。しかも、簡単にインスピレーションなんかでできるようなものほど実際壊れるのはたやすい。相手も自分も身なりだけでものを判断しているわけだからね。見飽きるなり、相手の嫌な部分がちょっと見えてきたりなんなりして、相手の姿形に魅力を感じなくなってしまったらすぐにパアになってしまうわけさ。
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