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「君のさあ、先生、捻くれ者になっていた君にもそっと救いの手を差し出すようなその生真面目ぇな先生、彼女は周りからどんな風に思われているんだい?」
………?……
そんなことを訊いてどうする?
何か嫌な予感が僕の脳裏に過る。僕は完璧な敗北を喫して止まりかけていた脳をまたゆっくりと回転をさせる。
…先生は確かにいじめの標的になっていた。それがどうしたっていうんだ。先生はそれでも一生懸命やっているんだ。
僕はこのまま何を答えずに先生がこいつに悪く思われるのが癪だからこう答えてやった。
「優しい。だけど、正しいことは正しい。間違ったことは間違っているということができる立派な先生だ」
僕はおそらく教室の中にいる生徒の大半が思っているだろうことを排除して、自分の考えだけを抽出して述べた。
これを否定するような材料何かないだろう。
「…ふーん、そうか、わかった。ありがとう」
藤代はそういって指を回し始めた。
………
…ちょっと待て、一体何のために僕にそれを答えさせたんだよ。自分の中だけで納得すんなよ!
藤代はどこからか綿棒とティッシュを取りだし自分の耳掃除を始めた。
「…おい、どういうつもりなんだよ。人に質問しといて説明もなしかよ」
僕が怒鳴ると、藤代は慌てて綿棒をティッシュに包んでポケットに仕舞う。
「あれ、訊きたいのかい?」
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