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第五章5節
5 一九九九年 五月 二十七日 (木)
…な、なんてことをいうんだよコイツは。
先生はみんなのことを思って正しい言葉を放っているんだ。
それを本人は本当は心にも思っていない? しかもそれを周囲にいうことで他人に嫌われる?
先生を侮辱する気かよ。何の根拠を持ってそんな出鱈目をいえるんだ!?
………畜生、胸がムカムカする。
僕は拳に精一杯力を入れる。一発ぐらい殴ってやりたい気分だ。
「どうしたんだい? 何か君を怒らせるようなことをいったかい?」
僕は藤代をきっと睨む。
しかし、奴は全然物怖じしない。
「何なら僕を殴ってみるかい? 僕はさっきもいったけど紳士なんだ。一発や二発、頬に深いのを入れられたくらいで君をどうにかしようなんて考えないから」
そんな罠に引っ掛かるものか!! 行き場のない怒りは右手を強く握り締めた際に爪からつたって流れ出始めた血に表れていた。
僕はカラカラの喉に密閉された部屋の中、淀んだ空気を飲み込む。
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