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バスの中には、幼馴染みの響と律の二人しか利用者はいない。夕方の田舎のバスは、通学に利用する学生くらいしかいないものだ。
夕日が二人を照らす。
「もうすぐ高校生活も終わっちゃうね」
律が、後ろの席にいる響に向かって言うと、響はスマホをいじりながら答える。
「そうだな」
「響。お話があります」
バスの席でわざわざ正座に座り直す律は、後ろにいる響の瞳をじっと見つめた。
視線に気づいたのか、響はスマホをしまい、律を見る。それからふざけた口調で訊ねた。
「何だね、律さん。言ってみたまえ」
「わたし、好きな人がいます」
「ほほう」
と、口調はふざけたままだが、響は心中で驚いた。
好きな人がいる。それを響の前で話すということは、その好きな相手が自分である可能性は限りなく低い。
(そうか。俺ではないのか)
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