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佐藤が話し疲れた頃、気付けば陽が傾き、外から聞こえてくる悲鳴も少なくなっていた。
耳に入るのは、外の化物のうめき声と、部屋内にある機械音ばかりとなった。普段ならば車の走行音、クラクション、道を行き交う人々の声が聞こえてくる時間帯だ。充実していた二週間とのギャップに、佐藤は急に不安になった。
煙草を吸うか部屋の武器の手入れしかしない軍服の男に、今回のパニックについて聞こうとした時、階下で銃声がした。外の化物達もそれにつられてうめき声が大きくなった。マンション内に誰かがいるのかもしれない。部屋を出ようとした佐藤を井上が止めた。
「さっき俺がここに入った時、数体の化物も入った。現状がわからないまま外に出るのは危険だ。」
「だけど助け――」
「銃声がしたって事は自衛してる筈だ。陽も沈みかかってる。今出るのは得策ではない。」
それもそうか、と諦めかけた。
「待て。様子がおかしい。外の化物がマンションに入って来てる。」
佐藤は窓から外を覗いた。確かに化物がマンションに向かっている。
「――さい!」
微かに声が聞こえる。二人は耳をすませた。
「助けてください!開けてください!」
今度ははっきりと聞こえた。恐らく銃声の主だろう。オートロックの玄関を破り逃げ込んできたに違いない。今度こそ、と佐藤は外に向かう。
「待て兄ちゃん。マンション内にあれだけ入って来てる。それこそ危険だ。」
「だけど助けを求めてるんだ!放っておけないだろう!」
「俺が行く。兄ちゃんは留守番だ。」
井上は佐藤を座らせた。その振舞いから頑として部屋から出さないという意思が伝わってくる。
「何か音の出ない武器はあるかい。」
「これならどうかな!」
佐藤はボウガンを井上に渡した。ドアの覗き穴から外の様子を伺い「行ってくる」と一言。井上はドアを開けた。
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