第一章 【二】

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       二、  外がやけに騒がしい。窓からは強い陽射しが確認できる。外を覗くと交通事故が多発していた。  様々な機械に囲まれながら、震えている男がいる。【佐藤優也】は、外の音が聞こえる度に血の気の引く思いだった。  佐藤の日課は、反政府組織【レジスタンス】の支持者達が集まるサイトにて、同志らと我が国の在り方を語る事だ。元々パソコンや無線などが趣味で、所謂、インドア派である。インドア派と言えばまだ聞こえはいいが、佐藤は重度の引きこもりであった。飲食物の買い物すらネットから注文し、外出する事は殆ど無い。そのせいかやや肥満体型、俗に言うぽっちゃりだった。  佐藤がそのサイトで政府の生体実験の情報を見つけたのは、二週間前に遡る。失敗すれば深刻なバイオハザードが起こるとの事だ。サイトでは、国家的な危機だと大いに盛り上がった。皆、他人事なのだ。レジスタンスはこの実験に対し、抗議文書や実力行使でなんとしても阻止する構えらしい。  佐藤はレジスタンスを支持しているが、その存在を信じているかというと、実のところ五分五分だ。レジスタンスはインターネット上でたまたま隠しリンクを発見し、突如現れた謎のヒーロー像である。これが佐藤の退屈な日常には大変刺激的だった。頻繁にサイトに赴き、掲示板を通して知り合った仲間達との会話に熱中した。  しかし「いたら良いな」と思うものの、自分と同じ様な境遇で、同じ様に退屈している人間同士が暇を潰し合う、同好会の様な感覚は捨て切れなかった。
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