第一章 【二】

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 あるかどうかもわからないヒーローが、政府に抗議すると言っても安心には繋がらない。そもそもの生体実験も眉唾ものだが、暇つぶしにこの情報に乗ってみるのも面白そうだ。それならば生き残れる様に、サバイバルの準備をしよう。どんな準備をするか話すのもまた盛り上がるだろう。佐藤にとってはこの程度の軽い気持ちだった。  長期保存可能な飲食物、武器、部屋の補強も必要になる。無線、ラジオ、自作の電波受信アンテナや自家発電の設備は、趣味が高じて既に一級品と呼べる物が揃っている。武器に関しては、戦時中のこの国において、自衛の為だと申請すれば簡単に手に入った。それから部屋の補強、資材は通販で用意した。慣れない大工仕事は、辛くもあり、楽しくもあった。佐藤が身体を動かし、汗をかくのはいつぶりだろうか。  こうして、佐藤の住む一見なんの変哲もない三〇三号室の内装は、頑丈に仕上がり、基地の様になった。万が一に備えて、いずれは監視カメラのシステムなども用意しようと考えている。この二週間は非常に充実しており、これほど晴々とした気分は数年ぶりだった。
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