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警護に失敗し、命すら落としたという事で、神林家は家禄を三十石から五石に減らされた上、小普請組へ組替えという厳しい処分を受けた。
しかし、十年で時は流れた。小忠太の死で気落ちした久高は、執政府によって隠居させられ代替わりをした。今は、首席家老として政権を握った外記の天下である。
宗次郎は、そうした藩内の政局からは身を遠ざけ、父から授かった剣を磨きに磨き、剣客としてそこそこ名を挙げるようになった。
今では、この不倒流梅津道場の師範代を務めている。道場主の梅津主水は、父と親しい剣友で、病弱な母を抱えて難儀していた自分を拾ってくれたのだ。そして去年、主水の一人娘・十亀と結婚した。
十亀は無口で控えめな女だが、主水に武芸を仕込まれ、その腕は女ながら中々のものである。そうした女と共に生きる。子はまだいないが、幸せな日々だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
宗次郎が、仇敵である外記に呼び出されたのは、秋菊も薫りだした長月も晦日の事である。
場所は、城下郊外にある禅宗〔天霊禅寺〕の本堂。枯山水の美しい庭がある、松永家の菩提寺だった。
「よう来たな」
向かい合うと、外記が言った。
「まず、面をあげい」
宗次郎はその言葉に従った。
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