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立ち尽くす氷月の顔を、不意に神無が覗き込んだ。
「氷月さん」
「……何?」
「目が覚めた時、仰いましたよね。此処は地獄かって。自分が地獄に落ちると疑わないのは、して来た事を受け止めているからでしょう?」
真っ直ぐな眼差しから目を逸らし、突き放す強さで言葉を発する。
「どんなに後悔したって、許されない事だってあるだろ」
どんなに悔やもうが、叫ぼうが。
許されない事がある。
もう戻らないものがある。
死んだのならば地獄に行くと思っていたのに。
目が覚めて最初に見たのは、微笑んだ娘の姿。
夢ではないのかと疑ってしまう程、穏やかな。
いっそ本当に死んでいたなら、楽になれたのだろうか。
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