1人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
「お父さん。こちらは無理矢理連れて来て、協力を要請する側ですよ。文句を言わないで下さい」
腰に手を当てた神無に諫められ、面倒そうに息を吐く。
「分かったよ。お前も真面目だよなあ」
「お父さんが不真面目過ぎるんです」
相変わらずの堅い調子に苦笑し、改めて少年の方に向き直る。
「氷月だったな。俺は清世鏑【かぶら】だ。お前、此処に来る前の記憶はあるか?」
「…………」
露骨に怪しむ視線だけが返って来る。
神無が取りなすように、笑顔を浮かべて言った。
「ごめんなさい、氷月さん。悪い人じゃないんです。ただ貴方を心配しているだけで。戸惑うお気持ちは分かりますが、詳しい事はこれから説明しますから安心して下さい」
「……分かった」
意外にも素直に答えた氷月を、鏑は興味深く見る。
大分ひねくれている印象を受けていたが、実はそうでもないのか。
考えながら少年に語り掛ける。
「別にお前の事を詮索する気は無いぞ。ただ、少しばかり力を貸して欲しいってだけでな」
「力?」
「ああ、そうだ」
訝しげな顔をした氷月の方に、僅かに身を乗り出して尋ねる。
「単刀直入に訊く。お前、腕は立つか?」
「は?」
「具体的に言うなら、刀は使えるか?」
最初のコメントを投稿しよう!