時の境

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「お父さん。こちらは無理矢理連れて来て、協力を要請する側ですよ。文句を言わないで下さい」 腰に手を当てた神無に諫められ、面倒そうに息を吐く。 「分かったよ。お前も真面目だよなあ」 「お父さんが不真面目過ぎるんです」 相変わらずの堅い調子に苦笑し、改めて少年の方に向き直る。 「氷月だったな。俺は清世鏑【かぶら】だ。お前、此処に来る前の記憶はあるか?」 「…………」 露骨に怪しむ視線だけが返って来る。 神無が取りなすように、笑顔を浮かべて言った。 「ごめんなさい、氷月さん。悪い人じゃないんです。ただ貴方を心配しているだけで。戸惑うお気持ちは分かりますが、詳しい事はこれから説明しますから安心して下さい」 「……分かった」 意外にも素直に答えた氷月を、鏑は興味深く見る。 大分ひねくれている印象を受けていたが、実はそうでもないのか。 考えながら少年に語り掛ける。 「別にお前の事を詮索する気は無いぞ。ただ、少しばかり力を貸して欲しいってだけでな」 「力?」 「ああ、そうだ」 訝しげな顔をした氷月の方に、僅かに身を乗り出して尋ねる。 「単刀直入に訊く。お前、腕は立つか?」 「は?」 「具体的に言うなら、刀は使えるか?」
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