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感心したように言われて、自分の体を見下ろす。
どうにも軽くまとわり付くようだが、動き易そうな感じではある。
「こちらでは、ほとんどの人が洋服で生活していますから、慣れるまでは不自由かもしれませんけど。後で氷月さんの服、選びに行きましょうね」
神無は気遣う瞳を向け、案ずる声で続ける。
「お体の調子はどうですか?」
「……別に悪くはないよ」
その言葉にほっとしたような顔をした神無が、大人びた口調で言う。
「では、少し来て頂けますか。お父さん……私達の上司がお待ちです」
導かれるままに外に出て、長い廊を歩く。
白い壁に、透明の板の向こうに見える景色。
目に映る物全てが見慣れない不思議な物ばかりだ。
けれど何よりも不思議なのは、隣を歩いている娘だ。
胸の痛みを切り裂くような叫びが、夢の中の出来事だったかのように。
今こうしている事が夢のように。
此処は、彼女はどうしてこんなにも静かで穏やかなのか。
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