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悔やんでも悔やみ切れない、無数の過ち。
今も目を閉じれば、視界は朱色に塗り尽くされる。
「そうか……」
鏑は深く息を吐いてから、明るい調子で言った。
「ま、とにかくお前は俺の部下って事にしとく。まずはこっちに慣れてくれ。それからどうするかは、お前が決めれば良いからよ」
「分からない事があったら、私に何でも訊いて下さいね。氷月さん」
神無の優しい笑顔を見返した時、胸の疼きは激しさを増した。
この優しさに甘えては、また過ちを繰り返してしまうかもしれない。
氷月は目を逸らして低く呟く。
「……あんたら、おかしいよ。僕に何をさせたいのか分からないけど」
顔に浮かぶのは、自嘲の笑み。
誰よりも自分自身を許せない者の。
「僕が今まで、どんな生き方をして来たのか知らないだろ。もう何人殺めたか分からない。どれだけの血を浴びて来たか分からない。そんな奴に頼み事なんて、どうかしてるよ。関わらない方が身の為だ」
「……ガキが偉そうな事を言うんじゃねえよ」
鏑は怒ったような口調で続ける。
「お前、まだ若いだろ。幾らでもやり直せるんだよ。後悔出来る内はな」
そう言い残して部屋を出て行く。
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