序章 井戸の怪

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 今でも本当に、幽霊だの、化け物だのといった話は、大の苦手だ。  暗闇は、もっと苦手だ。  闇の中には、昏く冷たくおぞましい何かが凝っている――ような気がするのだ。  どんなに、幽霊も化け物も作り話で、実際には存在しないと自分に言い聞かせても、怖いものは怖い。  しかし、ここで臆していては、相手の思うツボだ。  隼介は、目を閉じて、足で探り探り、そろそろと進んでいった。  目を閉じていれば、もちろん何も見えないが、それは闇ではない。  現実逃避かもしれないが、隼介はそう信じていた。  暗闇が怖いのではない。暗闇にいる、「何か」が怖いのだ――  しかし――  目を閉じていても、音は聞こえる。  むしろ、視覚が遮られている分、他の感覚は鋭敏になっている。
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