188人が本棚に入れています
本棚に追加
今でも本当に、幽霊だの、化け物だのといった話は、大の苦手だ。
暗闇は、もっと苦手だ。
闇の中には、昏く冷たくおぞましい何かが凝っている――ような気がするのだ。
どんなに、幽霊も化け物も作り話で、実際には存在しないと自分に言い聞かせても、怖いものは怖い。
しかし、ここで臆していては、相手の思うツボだ。
隼介は、目を閉じて、足で探り探り、そろそろと進んでいった。
目を閉じていれば、もちろん何も見えないが、それは闇ではない。
現実逃避かもしれないが、隼介はそう信じていた。
暗闇が怖いのではない。暗闇にいる、「何か」が怖いのだ――
しかし――
目を閉じていても、音は聞こえる。
むしろ、視覚が遮られている分、他の感覚は鋭敏になっている。
最初のコメントを投稿しよう!