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「おのれ――。ば、化け物など、いない――っ!!」
隼介は脇差しを抜き放ち、めちゃくちゃに振り回した。
相手が見えないのだから、剣術も何もあったものでは無い。
不意に、ひやりとしたものに足をすくわれて無様に転んだ。そのまま何者かに足首をつかまれて、立ち上がることも、それ以上後退ることも、できない。
「あっ、あっ、うわああぁっ――」
重い冷気が、どっと隼介に襲いかかり、闇の底へと引きずり込まれた。
……クルシイ……タスケテ……ヤメテ――――!!
強い力で押さえ込まれたかのように、息ができない。
鼻からも口からも、ガボガボと水が肺腑へと流れ込み、もはや助けを呼ぶこともできなくなった。
体は凍えきったように固まり、もがくことさえできない。
寒い――
隼介は、幼子のように泣きながら、がたがたと震えた。
ただただ、寒い――
唯一……
自身の股間が生暖かくなるのを感じながら、隼介の意識は、闇に沈んだ。
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