Chapter1 無彩色

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Chapter1 無彩色

都会の生活に疲れた。 会社で言われる嫌味には、すっかり慣れてしまった。 テレビをつければ中身のない会話。 冷え冷えとした暗い部屋。 感情が動かなくなって、もうどれくらい経つだろう。 人と会えば 美味しいね。 楽しかったです。 それは大変でしたね。 その時の状況に合わせて自動的に作られる表情と共に、流れるように出る言葉たち。 以前は感情が伴わない言葉を言うことに若干の罪悪感を覚えることもあったけれど、今は何の感情も湧かない。 自分勝手な人たちに振り回されたり、期待してガッカリするより、ずっと楽。 なのになんでいつもこんなに疲れているんだろう。 「ワタシナンデイキテルンダッケ?」 そんな疑問が頭の中でぐるぐる回り、片時も消えなくなった頃、会社に退職願いを出した。 私のことを知っている人が1人もいない場所に行こう。 小さな旅行カバンの中には、2日分の着替えとハブラシ。 薄手のタオル。 旅行というと、ドライヤーからシャンプーまで持参し、荷物が多いと言われる私にとっては有り得ない少なさだ。 荷物がなくてもどうにかなる。 どうにかならなくても、別にいい。
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