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ここからは一生出られない。
もう、あんたの背中には印があるからね。」
走り去る時に声が聞こえた気がしたけれど、振り返らず、ひたすら走り続けた。
街を離れ、森に入る。
木々に邪魔され、顔は汚れ、髪はボサボサ。腕は枝で切れて血が出ている。
光が見える!
逃げ切れたんだ!
そう思って森を抜けると、そこは懸命に遠ざかっていたはずの街の中心部だった。
(そんな。)
街の人がこっちに来る。
急いで森に入り、逆の方向に走る。
今度こそ!
・・森を抜けると
目の前には温泉に満たされた曼荼羅の形の広場が広がっていた。
(どうして?)
どんなに森を彷徨っても、同じ場所に戻ってきてしまう。
ふと、さっき走り去る前に聞こえた言葉が蘇る。
「もう、あんたの背中には印があるからね。」
恐る恐る服の中に手を入れ、背中を触る。
(なにこれ。)
背中にミミズ腫れのような凹凸ができていて、丸い形から外に放射線状に広がっている。
あの、広場の曼荼羅のように。
いつ背中に印をつけられたか、心当たりがあった。
そう、ゴミを取ると言ってお婆さんが背中に触れた、あの時だ。
あたたかい手の感触に愛情を感じていたあの時の私に、今の状態を知らせたい。
こんな異様な街に一生閉じこめられるなんて、絶対いやだ。
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